続、ショッピングモール
今日も冴えない顔と髪型を入り口のガラスで確認し、手の消毒を済ませて入った右側にはペットショップ。
ショッピングモールには少し似合わない獣の匂いはすぐに足取りと共に薄れて行き、ウィンドチャイムのような沢山の風鈴の音がフェードインしてくる。
自分は、本来ショッピングモールには居てはいけない人間だと思う。
買うとしても靴下程度であるし、何より他の皆にある様な華がない。
自分がショッピングモールに求めているのは、高校生大学生、社会人カップル、などの人々が外出しているときに放出している、その時間その場所に自分がいることを全く疑っていない、ポジティヴなエネルギーだ。
そのエネルギーはとても甘い痛みで、自分もこの中にいればみんなの様に当たり前に輝いているのかも、とさえ勘違いしてしまう。
風鈴の音で少し気持ち良くなった自分に、マックでダラダラしている女子高生の視線が刺さる。
少し勘違いしていた自分に釘を刺してくれたおかげで、すぐに気持ちはブルーに戻る。
少し歩いてGAPを見つけると、付近にある息の長かったブランドが無くなっているのを見つけてしまった。
思えばここではなくしたものばかり目につく。
ふとすっかりブームの去ったタピオカ屋のある外の通りに出てみると、かんかん照りの日差しがアスファルトに照り返して、雪も降っていないのに真っ白な世界がそこにはあった。
前方に歩く華奢な女性の白いワンピースが、光をたっぷり蓄えて揺れていて、今にも飛んでいきそうなワンピースからすらっと伸びる手を、ガッチリした男性が捕まえている。
ここではなくしたものばかりが目につく。
少し泣いた僕は、すっかりショッピングモールの滞在券を失ってしまった。
泣きながら歩く男など、ショッピングモールには不必要だから。
帰りの窓にはまたしても光が海に照り返し僕に何かアピールしていたのだが、目の前が滲んでしまうため、無視した。
おそらく気のせいだろう